教育IGIセミナー
【学内限定】IGIセミナー「ヒトiPS細胞を用いた食と健康寿命のジェンダード・イノベーション」(2026年9月16日)
IGIセミナー「ヒトiPS細胞を用いた食と健康寿命のジェンダード・イノベーション」(2026年度第3回)
我が国は世界一の超高齢社会であり、健康寿命の延伸が喫緊の課題である。骨格筋は人体最大の運動器であり、身体活動に加えエネルギー代謝においても重要な役割を担っている。加齢に伴う筋量・筋力の低下はサルコペニアと呼ばれ、高齢者のQOL低下、要支援・要介護状態の重要な要因であることから、骨格筋老化を理解することが重要である。一方、骨格筋老化の過程やその制御機構は不明な点が多く、とくにヒトでの理解は乏しい。また、女性は男性と比較して一般的に長寿命であることが知られている。これらの背景から、ヒト骨格筋老化の理解、さらには骨格筋老化の性差の理解のため、我々はヒト骨格筋モデルを用いた研究を試みた。本セミナーでは、ヒトiPS細胞を用いた骨格筋老化モデルの構築、本モデルで得られたヒト骨格筋老化の制御機構を中心に紹介する。
開催概要
日時 | 2026年9月16日(水曜日) 09時30分~10時30分 |
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| 開催方法 | Zoomミーティング |
| 対象 | お茶の水女子大学の学部生、大学院生、教職員など学内の方(お茶大のメールアドレスをお持ちの方) |
| 講師 | 清水誠(生活科学部 食物栄養学科 准教授) |
| 申込 | 参加費無料・要事前申込(9月15日(火曜日)12時締切) お申込みはこちら
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| 主催 | ジェンダード・イノベーション研究所 (IGI) |
| 問合先 | E-mail:ocha-igi@cc.ocha.ac.jp |
開催報告
今年度第3回となるIGIセミナーを開催し、学内外から18名が参加しました。今回は、IGI研究助成の採択者である本学基幹研究院自然科学系准教授の清水誠先生を講師に迎え、「ヒトiPS細胞を用いた食と健康寿命のジェンダード・イノベーション」と題してご講演いただきました。
清水先生は、骨格筋の肥大・萎縮の分子制御機構、骨格筋機能やエネルギー代謝を制御する機能性食品成分、ヒト骨格筋細胞を用いたヒューマンバイオロジーなどを研究されています。講演ではまず、日本をはじめ世界各国で高齢化が進む現状が示され、平均寿命と健康寿命の差を縮め、要介護期間を短くすることが社会的に重要な課題であると説明されました。なかでも骨格筋は、身体活動のみならずエネルギー代謝にも深く関わることから、その老化の仕組みを明らかにすることが健康寿命の延伸に不可欠であると指摘されました。
続いて、基礎研究によってヒトの代謝制御機構を解明し、その知見を機能性食品の開発へつなげる「リバースフードサイエンス」という研究姿勢が紹介されました。動物実験だけではヒトにおける食品の作用を十分に検証できないため、清水先生の研究室では、ヒトiPS細胞から骨格筋細胞を作製し、収縮運動などを再現できる実験モデルを構築しています。今回の研究では、iPS細胞由来の骨格筋細胞に緩やかなDNA損傷を与えることにより、筋線維の萎縮や収縮機能の低下などを示す老化モデルの作製に成功しました。さらに、P38 MAPキナーゼという酵素が老化に関与し、その働きを阻害すると筋萎縮や機能低下が抑制されることも明らかになりました。
ジェンダード・イノベーションの観点からは、使用したiPS細胞が女性由来であることを踏まえ、エストロゲン受容体の働きと骨格筋老化との関連について、現在進められている研究成果が報告されました。今後は男性由来細胞との比較を含め、性差を考慮した老化機構の解明と、その知見を活用した食品成分の探索が期待されます。
質疑応答では、培養細胞において性差をどのように捉えるか、性ホルモンを用いて男女の体内環境をどこまで再現できるか、エストロゲンや男性ホルモンが筋肉に及ぼす作用などについて活発な議論が交わされました。また、iPS細胞研究には多額の費用と精緻な操作が必要であり、一回の実験に約3週間を要するなど、研究上の困難も共有されました。基礎生命科学と栄養学に性差の視点を組み込み、健康寿命の延伸へつなげる可能性を考える、大変有意義なセミナーとなりました。
記録担当:渡部麻衣子(IGI特任准教授)
【参加者数】18名
講師紹介
清水誠

岡山県立大学栄養学科卒業(管理栄養士)、姫路工業大学大学院生命科学専攻修了(理学博士)。日本大学医学部助手、テキサス大学博士研究員を経て、2010年より東京大学大学院農学生命科学研究科にて特任助教、助教、特任准教授を歴任。2023年よりお茶の水女子大学基幹研究院准教授(ヒューマンライフサイエンス研究所兼務)。骨格筋恒常性の解明、機能性食品成分への展開を目的とし、分子栄養学手法を用いた研究に従事。

