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【学内限定】IGIセミナー「口腔乾燥症の性差要因の検証とバイオマーカーの特定」(2026年7月22日)

IGIセミナー「口腔乾燥症の性差要因の検証とバイオマーカーの特定」(2026年度第2回)

発症率に男女差がある、あるいは発症率が同程度でも病態の経過に男女で違いが見られる疾患について、内分泌環境の変動に着目した発症機構や病態の解明は、より適切で有効な治療提案や、個別化医療・精密医療の実現につながる可能性がある。口腔乾燥症は唾液分泌量が減少して口腔の乾燥に悩まされるとともに、多数歯う蝕、歯周疾患の誘発、会話困難や口腔粘膜疾患などの原因となる。損傷を受けた唾液腺の再生は起こりにくく、発症後の患者のQOLを著しく低下させる。本疾患は更年期以降の女性で発症率が高く、病因のひとつに女性ホルモンの減少にともなう唾液腺の機能不全誘発が予想されている。本セミナーでは、唾液腺機能調節の分子機構の解明を、糖鎖科学の視点からアプローチした研究成果について紹介する。

ポスターのPDFファイルはこちら

開催概要

日時

2026年7月22日(水曜日) 09時30分~10時30分

開催方法Zoomミーティング
対象お茶の水女子大学の学部生、大学院生、教職員など学内の方(お茶大のメールアドレスをお持ちの方)
講師相川京子(理学部 化学科 教授)
                
申込

参加費無料・要事前申込(7月21日(火曜日)12時締切)

お申込みはこちら 
https://forms.gle/jmFv6TJ47vSvSViSA

主催ジェンダード・イノベーション研究所 (IGI)
問合先

E-mail:ocha-igi@cc.ocha.ac.jp

開催報告

ジェンダード・イノベーション研究所(IGI)は、第2回IGIセミナーを開催しました。当日は、学内外から合わせて18名が参加しました。渡部麻衣子IGI特任准教授の司会のもと、基幹研究院自然科学系教授で、ヒューマンライフサイエンス研究所糖鎖化学創薬化学部門長を務める相川京子先生が、「口腔乾燥症の性差要因の検証とバイオマーカーの特定」と題して講演しました。本研究は、昨年度にIGIの支援を受けて開始されたもので、今回はその進捗と成果が報告されました。

疾患の発症率や進行、薬の効果には男女差がみられることから、個別化医療・精密医療の実現に向けて性差を考慮する必要があります。性差医学には、生物学的性差、社会的性差、ライフステージに伴う体内環境の変化という観点があり、本研究は主に三つ目に位置づけられます。相川先生は、米国における女性や少数民族の臨床研究への包含、日本における女性の健康支援策やAMEDの取り組みなど、国内外の性差医療の動向も紹介されました。

続いて、体の状態や疾患の有無、治療効果などを客観的に評価する「バイオマーカー」について、HbA1cなどを例に解説がありました。相川先生の研究では、更年期に減少するエストロゲンが唾液腺細胞に及ぼす作用に着目しています。更年期女性に多くみられる口腔乾燥症には女性ホルモンの影響が指摘されてきましたが、その生化学的な仕組みは十分に解明されていません。

実験ではラット由来の唾液腺細胞を用い、エストロゲンの一種であるエストラジオール(E2)を添加した際の糖タンパク質の変化を解析しました。その結果、特定の分岐型糖鎖を認識するDSAレクチンへの反応性が上昇し、糖鎖形成に関わる酵素の遺伝子発現も増加することが確認されました。さらに、質量分析によって、細胞接着に関わるインテグリン、イオン調節を担うナトリウムカリウムATPase、唾液中に分泌されるアミラーゼなどが関連タンパク質として同定されました。これらの成果は、エストロゲンが細胞に作用した結果として生じる糖鎖変化を、口腔乾燥症の新たなバイオマーカーとして利用できる可能性を示しています。

質疑応答では、エストロゲン受容体の発現量に男女差があるのか、健康診断などに応用できるのか、エストロゲンの少ない男性では唾液腺機能がどのように維持されるのかなど、多角的な質問が寄せられました。今後は、糖鎖修飾が細胞機能に与える影響の解明、測定感度と簡便性の向上、患者の唾液検体を用いた検証が課題となります。本セミナーを通じて、更年期女性の口腔乾燥症の理解と、性差を踏まえた診断・医療支援につながる研究の展望が共有されました。

記録担当:渡部麻衣子(IGI特任准教授)
【参加者数】18名

講師紹介

相川京子

お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 教授
お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所 糖鎖科学・創薬化学部門長
日本生化学会 代議員、日本糖質学会 評議員
糖タンパク質糖鎖修飾の生理的意義や病態との関連の解明を目指して、生化学、遺伝子工学、細胞生物学等の手法で研究を行っている