教育学生セミナー
【学内限定】富士通・お茶大リサーチラボ社会連携講座 学生セミナー「FUJITSU DAY」(2025年5月30日)
FUJITSU DAY:富士通の女性研究者・開発者と紐解く企業研究者としてのキャリアパス(富士通・お茶大リサーチラボ社会連携講座 学生セミナー)
お茶の水女子大学卒業生を含む女性研究開発者との交流を通して、富士通と一緒にご自身の将来のキャリアイメージを描いてみませんか?
「今後どのような進路を進んでいこう?」「自分の専門性は将来どのように活かすことができるだろう?」「研究開発職って実際どんな仕事をしているんだろう?」「”ワークライフバランス”って実態はどうなんだろう?」このような問いを考えるヒントとなるようなお話を、富士通の若手社員や長年の経験を持つ社員が、それぞれの視点から自らの経験をもとに、ざっくばらんにお話させていただきます。
イベント内では、皆さんからのご質問も大歓迎です。変化が激しく予測困難な「VUCA時代(*)」において、IT業界で挑戦し続ける女性研究開発者のリアルな声をお届けします。今後のキャリアを考える上でのヒントやネットワーキングの機会として、ぜひご参加ください。
(*)VUCA時代:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの言葉の頭文字を取った造語。物事の不確実性が高く、将来の予測が困難で、移り変わりが激しい現代を表す言葉。
開催概要
日時 | 2025年5月30日(金曜日)15時00分~16時30分 |
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会場 | 人間文化創成科学研究科棟6階604大会議室 |
対象 |
その他の専攻、学部・学科の学生さん、教職員の皆様のご参加も歓迎いたします。 |
主催 | ジェンダード・イノベーション研究所 富士通・お茶の水女子大学 リサーチラボ社会連携講座 |
プログラム
15:00-15:20 開催挨拶
富士通株式会社R&D人事部より開催挨拶ならびに当社研究開発職キャリア等について紹介
15:20-16:00 女性研究者・開発者によるパネルディスカッション
【登壇者】
松本奈紗(富士通研究所量子研究所)(お茶の水女子大学卒業生)入社4年目
高木紀子(富士通研究所先端技術開発本部) 入社16年目/マネージャー
【トークテーマ】
「富士通での研究開発業務」「企業研究者としてのキャリアパス」「富士通での働き方のリアル」等複数のテーマに対し、ざっくばらんにお話させていただきます。登壇者の学生時代の研究内容や、進路選択、富士通への入社の経緯、現在の仕事や働き方(育児との両立など女性ならではの話も含む)などを深堀りし、学生の皆様が今後の進路や将来のキャリアを主体的に考えるきっかけとなるような場を創出します。
16:00-16:20 フリートーク/Q&A
パネルディスカッションを踏まえ、学生の皆様からのご質問にお答えします。双方向のインタラクティブなセッションにさせていただきます。
16:20-16:30 クロージング
富士通株式会社R&D人事部より本日の御礼と今後の富士通が実施する見学会やインターンシップなどについてお知らせさせていただきます。
※16:30以降、15分程度を目途に、個別に質問がある方向けに、R&D人事部や登壇者と個別にお話いただける時間を設けます。
開催報告
2025年5月30日、本学学生を対象としたセミナー「FUJITSU DAY:富士通の女性研究者・開発者と紐解く企業研究者としてのキャリアパス」が開催された。本セミナーは、ジェンダード・イノベーション研究所と富士通株式会社の連携による「リサーチラボ社会連携講座」による企画である。
女性の工学人材の育成が社会的要請となっている今日、大学で理工系分野を専攻した女性たちが、企業の研究・開発職に就いて活躍するキャリアパスの構築と、その可能性について現役の大学生・大学院生に伝えることは、企業にとっても重要な活動となっている。本セミナーでは、パネルディスカッションの形で、富士通の量子研究所の松本奈紗さん(本学卒業生)と、先端技術開発本部の高木紀子さんが、女性研究者・開発者としての経験について話し、参加者からの仕事や働き方、キャリアパスについての質問に答えた。
セミナー冒頭では富士通のR&D人事部からの挨拶と富士通株式会社および富士通研究所の紹介があり、それに続くパネルディスカッションは、3つのディスカッションテーマを軸に進められた。
ひとつめのディスカッションテーマは「企業の研究者・開発者とは」であった。松本さんは本学で情報科学の修士過程を終了してから、富士通で研究の仕事を続けている。企業での研究について、大学での研究よりも実用に近く、社会に貢献している実感がある一方、短期間で成果を求められるといったプレッシャーもあるが、やりがいを感じていると話した。高木さんは、開発という仕事について、研究者が築き上げた技術を使える形にする仕事であると説明した。モノを作って人に渡すというプロセスには、できたものが正しく動くかの検証や資材調達など、多岐に分かれた工程があるとのことである。これまでに一番やりがいを感じたのは、自分が開発したプロセッサーを自分の仕事で使った時で、開発したモノが使われる、ということを実感したそうだ。参加者からは、仕事のプレッシャーはどのように乗り越えているか、仕事の悩みについては誰にどう相談しているのか、どのようなスキルアップの機会があるかといった質問があった。
ふたつめのディスカッッションテーマは「学生時代から就職までの歩み」。富士通への就職を決めた理由や、どういう人が研究職に向いているか、何が評価されるか、といったことについて、ふたりのパネリストは参加者から次々と出される質問に答えてくれた。学生時代に仕事について思い描いていたことと現状に違いはあるか、との問いに対してのふたりの答えは対照的で、松本さんは「あまりない」といい、高木さんは「たくさんある」と応じた。高木さんも修士課程で研究生活を送ったのちに富士通に就職しているが、開発という仕事についてのイメージはあまりもっていなかったという。研究と開発は、研究開発やリサーチ・アンド・ディベロップメントという形でひとまとめに語られることも多いが、そのふたつの職種の違いを知ることができるのも、本セミナーの企画の特徴であった。
最後のディスカッションテーマは「富士通での働き方について」であった。富士通は、新型コロナの流行をきっかけに、出社とリモートワークをフレキシブルに組み合わせることができる働き方を制度化してきている。また、ワーク・ライフ・バランスを尊重することを基本としており、通院や子どものお迎えのために仕事を中断したり、切り上げたりということへの理解が浸透しているそうである。女性幹部として働きながらの出産・育児の経験談からは、こうした制度が整っており、サポートがあることの重要性や安心感が伝わってきた。
参加学生たちは、終始熱心に登壇者の話を聞き、質問をし、終了後も登壇者との話を続けている姿も見られた。今回のような、企業の女性エンジニアから直接話を聞き言葉を交わす機会が貴重であることが、その様子から見て取れた。ワーク・ライフ・バランスや仕事と家事・育児の両立は、女性に限った問題ではないが、特に女性にかかりがちな負荷への対策が必要な企業人事の課題である。そこに配慮した働き方の制度の充実や企業文化の醸成は、女性の研究・開発職への就職を増やすことと、そこでの活躍に発展することだろう。富士通のR&D人事部では、研究開発職を目指す学生を対象に、オフィスツアーと研究者との座談会や、夏季インターンシップの実施を予定しているとのことである。
ジェンダード・イノベーションは理工系の研究開発の変革ステップとして、1.女性研究者の数を増やす、2.女性研究者が働きやすい制度を整える、3.性差を考慮した知識を整える、を提示している。この3番目がジェンダード・イノベーションということである。今回のセミナーは、直接的には1と2に関連するものであったが、この3つの変革ステップは連関してイノベーションを生む環境を創造する。本セミナーのような取り組みは、近い将来のジェンダード・イノベーション視点の研究開発の拡充につながるだろう。
記録担当:吉原公美(URA)
【参加学生数】10名